『ライスお替わり自由』
と、聞くと私の心はウキウキする。
それは小学生の頃の日曜日のゆっくりとした朝のような、
それとも月曜日にジャンプを買いに行くときの心境ような。
ここは下北沢、『ステーキのくいしんぼ』
私たちはかれこれ1時間くらい夕方の下北沢で、どこのお店でご飯を食べるか決めかねていた。
私たちと言うのは、隣に当時の彼女もいたからだ。
私はとにかくお腹がすいてたまらなかった、だから『ステーキのくいしんぼ』のライスお替わり自由を思い出して、彼女に『くいしんぼにしよう!』と告げたのだ。
彼女とは深い仲だ。私が大食いなのも知ってくれている。
カランコロンカラン♪と鈴がなる自動ドアが開いて、店内を見渡してみるとまだ夕方だからだろうか、お客はほとんど居なかった。
一番奥のソファーの席を私は選んだ。
私はステーキを頼みたかったが、腹に入ってしまえば同じと、安いハンバーグセットを注文した。彼女も同じのを頼んだ。
もう私のお腹のすき具合いは半端じゃなかった。
彼女と会話している内に、注文した料理を若いアルバイトらしき女の子が持って来てくれた。
ジュワーと音をたてるハンバーグは想像より小さかった。
ハンバーグに塩をふり食べる。
普通に旨い。
最初のライスを秒で食べてしまった。
『ライス大盛りで❗』と頼む。
二杯目もペロリと平らげる。
また、『ライス大盛りで❗』
三杯目もペロリ。
『すいませんライス大盛りで❗』この辺で焼き場の店主らしき人物がこちらをじろっと確認し始めた。
それを何度か繰り返し、
ハンバーグを少し残した状態で、ライス大盛りを六杯目に差し掛かかっていた。
半分引き気味のさっきの若いアルバイトの女の子が、テーブルにライスを運んでくる。
彼女に『もうお代わり止めて✋』と言われていたが、何を思ったか私は七杯目のライス大盛りをオーダーした。
すると焼き場から、恰幅の良い店主が現れ、
仁王立ちで
『節度っていうのがあるでしょ❗』
と、一喝されてしまった。
その声は狭い店内にエコーがかかるくらいの迫力だった。
彼女は真っ赤な顔をしていた。
私は七枚目をきちんと食べてから、レジへ向かい二人分の会計を済ませた。
もう『ありがとうございました』も言われなかった。
外へ出るともう日は沈み暗くなっていた。
あぁ~食べた❗と伸びをすると左側に
『餃子の王将』が見えた。
私はにやけたのだった。